本件は、上告人株式会社テレビ宮崎の代表取締役を退任した被上告人が、上告人会社の株主総会から被上告人の退職慰労金について決定することの委任を受けた取締役会において、上記委任の範囲を超える減額をした退職慰労金の決議がされたなどと主張して、上告人Y1および上告人会社に対して、損害賠償等を請求した事案。
被上告人は、4年間で社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領したことが税務調査において発覚。その当該超過分の源泉徴収税を負担するために、調査翌年度から2308万円報酬を増額し、退任するまで当該相当額を会社に転嫁し、併せて社内規程に違反する宿泊費等の支給を永続化。これらは新聞報道等により社会に知れ渡ることとなった(本件行為1)。さらに、交際費の上限を大幅に超過する額を支出させ、また海外諸費規程を大幅増額させ支出させた(本件行為2)。原審は、上告人会社に重大な損害を与えた行為とは言えない行為(本件行為3)をも考慮して減額した点において、裁量権範囲の逸脱・濫用があるとした。
最高裁判所は、本件行為3が上告人会社の損害を与えたか否かにかかわらず、本件行為1、2が本件減額規程による「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるとして、原判決を破棄、請求を棄却した。
■参考:最高裁判所|退職慰労金について、内規の基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例(令和6年7月8日・第一小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93176