Weeklyコラム 有終の美をかざる

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中小企業の事業承継において、最も重要な目標は、経営者が有終の美をかざる事ではなかろうか。たとえ事業に成功していても、事業承継において紛争等を起こす事は、一生の不覚になるものだ。事業承継を首尾よく行う要点は、謙虚な心構えである。

『易経』(易占の基本書)の中に、「地山謙」と言う卦(か)がある。君子(経営者)が有終の美をかざる為には謙虚さが必要と言う。すなわち、「人にして謙遜の徳あれば、どこへ行っても通ずる。君子にして始めて最後まで事を為し遂げ、終りを全うすることができる」(高田真治・後藤基巳訳『易経』岩波文庫)。

ここで謙虚さとは、経営者が自己の経営能力や功績を過信しない事である。例えば、後継者が決まっていて、承継の時期が到来して実行に迷うのは、謙虚さが足りないからである。「後継者はまだ自分と同じ程の業績を上げられない。社員の心服も得られない」等、と。極端な場合は、経営権の委譲において経営者と後継者が紛争を起こし、社内外から侮蔑されたり、信用が低下したりする。

ところで、経営者が謙虚さを持つ為には、早くから事業承継計画を準備して、過去の経営を反省したり、経営体制を見直したりする事が必要である。将来の見通しに自信があれば、謙虚な態度で事業承継が出来る。