物価の上昇が続く中、生活水準の維持のために持続的な賃金の引上げが求められている。10月時点での物価上昇率は対前年比2.9%上昇する一方、なかなか値上げや納入価格の引上げに踏み切れない中小企業も少なくない。結果として、賃金の上昇を妨げることにつながっている。
公正取引委員会と内閣官房は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。値上げをためらう、または実質的に拒絶される多くの中小企業が賃上げ原資を確保できる取引環境を整備することが狙いだ。指針には発注者・受注者に求められる行動指針12項目及び各項目の取組事例や留意点も併せて記載されている。発注者に対し、転嫁受入れの方針決定に「本社(経営トップ)が関与する」、労務費の転嫁について「発注者から定期的に協議の場を設ける」こととし、協議せずに長年価格を据え置くことは「独禁法上の優越的地位の濫用等の問題となる恐れがある」などの留意点も付記している。
また、価格転嫁を求めたことを理由とする不利益的取扱いをしないことなども明記の上、これらが守られない場合は、独禁法と下請代金法により厳正に対処するとされている。受注者・発注者ともに指針について確認する必要があるだろう。
■参考:公正取引委員会|(令和5年11月29日)「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の公表について|
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/nov/231129_roumuhitenka.html