平成26年11月、過労死等防止対策推進法が施行されたことは記憶に新しい。厚生労働省では、今夏に過労死防止対策大綱をまとめる予定で、先般、その骨子案が公表された。
骨子案を見る前に、まず現状の我が国における労働環境を整理しておきたい。
過労死はその文字の通り、労働時間が長い、労働内容が過酷である 等による過労が原因で死に至る。パートタイム労働者を含めた年間総労働時間 は、ゆるやかに減少しており、平成24年には1,765時間となっている。フランスの1,402時間と比較すればまだ高水準ではあるが、イギリスが1,637時間、アメリカが1,798時間であることを考えれば、他国と比して著しく長時間とは言えないだろう。しかし、この数字は若干恣意的な要素があり、パートタイム労働者を除いた一般労働者の総労働時間は2,000時間を超えている。平成21年に2,000時間を割り込んだことがあったが、過去20年以上この水準が続いている。
これだけ長期にわたって総労働時間が固定されていることを鑑みると、ちょっとした施策で劇的な変化が起きるとは考えにくいだろう。問題の本質は根深いことをまず理解するところからスタートする必要があるのではないか。