会社の社長や商店の店主と面談していて、いつも気になる事がある。あなたの会社や商店は、今後どのような方向(規模・戦略・品揃え等)に行くのですかと問うが、半数以上の方はよく分からないと答える。これは簡略に言えば、ビジョン(展望)が無いという事である。逆に、事業承継等を機会に、自社の進むべき方向に目覚めて、真剣にビジョンの確立を探る経営者もいる。
例えば、X社(和食レストラン経営)の社長は、後継者の発した「全国どこにもあるような店を経営してもつまらない」という一言に衝撃を受けて改めて自社のビジョンを考え直した。結果、軌道に乗るまでの資金として売上3カ月分を用意し、客層と食材仕入ルートの見直し、メニュー構成の差別化、接客法と店舗イメージの個性化等を中心にビジョンと経営戦略を構築した。責任者は後継者が担った。
ビジョン構築による効果は未定であるが、後継者が将来の方向性を認識出来た事は確かである。多くの企業で事業承継が課題になっているが、その際に最優先で検討すべき事柄は、ビジョンや経営理念の見直し(もし不明であれば設定)ではなかろうか。そのビジョンが経営者・後継者・全社員に共有され、いずれ取引先・顧客等に周知出来れば会社の将来の礎(いしずえ)となるであろう。