上告人の公立学校教員であった被上告人が、酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、職員の退職手当に関する条例12条1項1号の規定により、宮城県教育委員会から、退職手当等の全部不支給処分を受けたため、上告人を相手に、上記各処分の取消しを求める事案。
原審は、処分は適法であり取消請求を棄却すべきものとした上で、本件規定の趣旨を超えて被上告人に著しい不利益を与えるものであり、7割を超える分の不支給は裁量権の逸脱で違法とした。
最高裁は、裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては、当該処分に係る判断が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱・濫用したと認められる場合に違法であると判断すべきであるとした。それを前提に本件全部支給制限処分の適否について、本件非違行為の態様は重大な危険を伴う悪質なものであり、県教委が、複数回にわたり服務規律の厳格化等の注意喚起を図っていたことや、公立学校に係る公務に対する信頼やその遂行に重大な影響や支障を及ぼした事実も踏まえ、被上告人の約30年に亘る誠実な勤務状況等を勘案しても、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない、とした。
■参考:最高裁判所|懲戒免職処分を受けた公立学校教員を退職手当等全部を支給しない処分が、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとはいえないとした事例(令和5年6月27日
・第三小法廷)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92170