上告人(薬局)に雇用され、薬剤師として勤務していた被上告人が上告人に対し、時間外・休日・深夜労働に対する賃金と付加金等の支払いを求める事案で最高裁第一小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄、同部分を東京高裁に差し戻した。
被上告人は賃金に加え業務手当の支払いを受けていた。同手当は時間外労働があったものとみなし、時間外の代わりとして支給される。被上告人は雇用直後から休憩時間に30分間業務に従事していたが、これについては就業管理がされておらず、上告人が被上告人に交付した毎月の給与支給明細書には時間外労働や時給単価を記載する欄があったものの、ほぼすべての月が空欄だった。
原審は、業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを被上告人が認識できない状況下では、業務手当の支払いを法定の時間外手当の全部または一部の支払いとみなすことはできないとして、被上告人の賃金や付加金の請求を一部認容。最高裁は▽業務手当の支払いをもって時間外手当等に対する賃金の支払いとみることができる。労働時間の管理状況等の事情はそうした判断を妨げない▽業務手当の支払いをして被上告人への労働基準法37条の割増賃金の支払いとはいえないとした原審には、割増賃金の解釈に違法があるとした。
■参考:最高裁判所|未払賃金請求控訴,同附帯控訴事件(平成30年7月19日・第一小法廷・破棄差戻)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87883