書店経営持ち直しの兆し 地方中小店舗は依然厳しい状況

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2025年上半期、書店業界における倒産件数が大幅に減少し、前年同期の11件からわずか1件となったことが帝国データバンクの調査により明らかとなった。これは1995年以降で最少の水準であり、長年続いていた書店業界の縮小トレンドに一定の歯止めがかかりつつある兆候とも受け取れる。この背景には、書店が単なる書籍販売の場ではなく、地域コミュニティに根差した複合的なサービス提供拠点として再定義されつつある点が挙げられる。

具体的には、書店が従来型の棚売り・レジ販売にとどまらず、カフェの併設、文房具や雑貨の販売、さらには学習塾やイベントスペースとの融合といった新たな付加価値創出に取り組む事例が増加している。このような「滞在型」や「体験型」への業態転換は、書籍の売上減少を補う収益多様化の試みとして注目される。特に生活提案型書店や地域密着型の小規模店では、書籍とともに時間を過ごす「場」としての価値を提供することが、来店動機の向上やリピーターの創出につながっている。

2024年度決算において増益の書店は39.9%に達し、過去10年間で2番目に高い水準を記録した。一方で、地方都市や郊外における単独書店では、集客手段や仕入れ力に限界があり、中小店舗は依然として厳しい。

■参考:帝国データバンク|「書店」の倒産動向(2025年1-5月)|

https://www.tdb.co.jp/report/industry/250603_book25y/