2025年5月30日に公布された「民事裁判情報の活用の促進に関する法律」は、今後のデジタル社会における司法情報の利活用を推進する制度的枠組みとして創設された。本法は、民事訴訟における判決書等の情報を「民事裁判情報」として明確に位置づけ、その適正かつ効果的な活用を可能にするため、新たに「民事裁判データベース制度」を導入するものである。
本制度の中核は、最高裁判所が保有する民事裁判情報を、法務大臣が指定する法人に提供し、当該法人が仮名処理等を行ったうえで、学術・事業用途等に広く利用できる形で提供するという点にある。氏名や住所などの個人情報は記号等に置換され、プライバシーへの十分な配慮がなされる。また、これらの情報は単なる判決文にとどまらず、訴状、準備書面、証拠書類等を含む広範な記録が対象となり得る。
この制度により、裁判情報を活用した高度なリーガルサービスの提供や、実務分析・リスク評価・契約類型ごとの判例傾向の可視化等が進み、さらに、AIやデータサイエンスを活用したリーガルテック分野の発展に対しても、本制度は基盤的役割を果たすとされる。運用開始は2027年が予定されており、今後の実務や研究に大きな影響を与えると見込まれる。
■参考:法務省|民事裁判情報の活用の促進に関する法律案|
https://www.moj.go.jp/houan1/housei_teiin_00003.html