学校法人明浄学院を被害者とする業務上横領事件に関する事件で、逮捕・勾留され起訴されたが、その後無罪判決を受けた。本案訴訟は、被告人が上記逮捕・勾留・起訴が違法であるとして国家賠償を求める訴訟を提起した。本件は、抗告人は、検察官が被疑者Aを取り調べる際に録音・録画した記録媒体の提出を求めた事案となる。
原々審は、本件供述の信用性の判断においては、検事の言動のうち非言語的要素も重要であり、これが客観的に記録されている本件公判不提出部分は、最も適切な証拠であって、代替困難であるから、記録媒体の一部の提出を命じた。原審は、記録媒体の提出を命じる一方で、相手方の判断が、裁量権を逸脱し、濫用したものまでとは言えないとして、提出を拒否した部分については却下した。
最高裁判所は、原審の判断を認めず、記録媒体の提出を命じた原々決定を支持。記録媒体が重要な証拠であり、提出を拒否することは裁量権の範囲を逸脱していると判断。また、記録媒体の提出によって被疑者Aの名誉やプライバシーが侵害されるおそれはないとし、また、本件横領事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがあるとはいえないとし、原決定を破棄し、相手方の抗告を棄却した。
■参考:最高裁判所| 検察官による取調べの録音録画記録媒体の提出を拒否した国の判断が、裁量権の範囲を逸脱濫用したものとされた事例(令和6年10月16日・第二小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93424