自分に合った仕事が見つからないと思い悩んで、むやみに転職を繰返す人がいる。自分の天職を追及するあまり、やがて就職活動も止まってしまう人もいる。
そもそも、天職とは、長く一つの道に打ち込むことによって形成される。「一を以てこれを貫く」(出典は『論語』)と言うが、一途に打ち込んで独自の業務分野を築く企業もある。
X社(リサイクルショップ)は、現社長Aの父親が昭和30年代に創業した。Aは大学卒業とともに父親の手伝いを始めたが、当時は中古品を何でも扱う古物商で、若者の仕事としては夢が持てなかった。10年くらいは、自分がしたい仕事が分からなかったので、仕方なく親の仕事をしているという意識だった。この意識は父親の死によって大きく変化した。いざ自分で経営してみると、買取り価格の決め方・接客態度・宣伝の媒体等によって業績が大きく違うことに気づいた。これまでは散らかっていた店頭・店内の掃除や陳列の整理に力を入れると、来店客や売上が自然に増えた。
その後、X社は時流に乗って、宝飾品や海外ブランドを戦略的に扱って地域一番店となった。「仕事は長年一途に打ち込み、商品や知識が身体の一部になったと思えるようになれば天職になったと言える」と、最近のAは仲間や従業員に話している。