相手方は抗告人に対して相手方への金員の支払いを命ずる旨の仮執行の宣言を付した判決を債務名義とし、抗告人の第3債務者に対する売掛債権について差押命令および転付命令を得た。その後、命令等を抗告人および第3債務者に送達し確定した。
第3債務者は送達を受ける前に抗告人との間で、前件転付命令等に係る売掛債権のうち、1463万円余の債権につき、電子記録債権を発生させ、送達後支払われていた。相手方は送達の1か月後に、抗告人が有する差押債権目録記載の各売掛債権につき差押命令を申立て、同命令が発せられた。その際執行債券から前述の被転付債券の額は控除されていなかった。抗告人は、本件差押命令は民事執行法146条2項が禁止する超過差押えに当たるとして、取消しを求める執行抗告をおこした。
原審は、本件支払いにより被転付債権が消滅したことを相手方に対抗できる以上、転付命令の執行債権は弁済されたとみなされないとした。
最高裁は、上記送達後に電子記録債権が支払われたとしても、上記差押に係る金銭債務は消滅し、第3債務者はその消滅を差押債権者に対抗することができると解され、上記支払いによって同法160条による上記転付命令の執行債権等の弁済の効果を妨げるということはない、とし破棄した。
■参考:最高裁判所|債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(令和5年3月29日・第三小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91990