会社役員である上告人は、インターネット上の電子掲示板に匿名で投稿された、私腹を肥やしている印象や殊更に容姿を揶揄する内容は、社会通念上許容される限度を超えているとして、接続サービスを提供したプロバイダである被上告人に発信者情報の開示を請求した。
争点として、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律4条1項の、発信者情報を定める省令の改正前と改正後の取扱いにつき争われた事案。上告人は、自己の権利の侵害に係る発信者情報として、発信者の氏名、住所等の開示を求め訴えを提起し、改正省令施行後に追加された「電話番号」の開示を追加する提訴に変更した。原審は、施行後に追加請求することは、発信者の通信の秘密や表現の自由という権利利益を侵害するとして、遡及適用する規定がない以上許されないとした。
最高裁は、改正省令その他の法令において、施行前の権利の侵害に係る発信者情報の開示の請求について、具体的な適用排除の経過措置等おかれておらず、権利侵害に係る情報の流通の時期にかかわらず、改正後省令の規定が適用されるとすべきとした。よって施行後の権利の侵害に限り電話番号の開示請求の対象となるとは言えないとして、上告人の請求を容認した。
■参考:最高裁判所|総務省令第82号の施行前に自己の権利を侵害されたとする者が発信者の施工後追加の電話番号の開示を請求することの可否|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91721