世の中の職業は多種多様であるが、現在仕事に就いている人に「なぜこの仕事をしているのですか」と聞いても、明確に回答出来る人は少数であろう。「今の仕事が好きですか」と聞いても、多くの人は「嫌いではない」という程度の回答かもしれない。
職業選択の動機は、具体的に「家業だから成り行きで継いだ」「就職活動で偶々合格した」「知り合い・友人の紹介があった」「転職時サイトで目にした」等ではなかろうか。勿論、いつの時代も早くから職業を決め、進学や修業入門等により仕事を選択した人も少数ながら存在する。 夢の無い職業選択の動機だが、人は一般に、生まれた家や地域の環境、素質・体力・学力、性格等によって、その時の事情を勘案して決定している。
古人も、「杣(そま)が深山に入て木を伐るは、材木が好きにて伐るにはあらず、炭焼が炭を焼くも、炭が好きにて焼くにはあらず(中略)白米も自然に山に登り、海の魚も、里の野菜も、酒も油も皆自ら山に登るなり」等と(福住正兄筆記、佐々井信太郎校訂『二宮翁夜話』岩波文庫)。職業を思い通りに選択する事は難しい。そもそも、就きたい仕事が分からない人もいる。大事な事は、自己の境遇、技能・知識・性格等の素質を早くから認識する努力を始め、その計画を実行する事ではなかろうか。