吉村昭の著書『三陸海岸大津波』(文春文庫)によると、津波被害の予知と対策がいかに難しいかを痛感する。
三陸海岸は歴史上何度も津波被害を受けて、地域外の人からみると驚く程の対策をしていたが、2011年3月11日の大津波は予想を遥に超えていた。現在発生しているコロナ禍も3年前は一般人に知られていないものであった。感染症専門家の一部以外は予知した者はいなかったであろう。BCP(事業継続計画)策定済みの企業でも知らなかった。
さて、コロナ禍のように予知が難しい事を放置していて良いのだろうか。景気、商品相場、各種流行等の予測は自然災害の予知と同じくらい難しい。当然、予知が困難でも何らかの対策を用意しなければならない。X社(半導体部品製造業)は、BCP策定の際、社員に呼び掛けて災害予知とその対策のアイデアを募集した(予算・技術等不問)。地震・火災・風水害等の予知と対策が多かったが、中には特異な内容もあった(全社員がインフルエンザや食中毒になった、大粒の雹が降って車や設備が大被害に遭った等)。奇抜なアイデアがBCPの改定に大変役立った。平穏時に考える人間の能力には限界がある。時には既存の知識や常識的なアイデアから離れて、自由な発想によって対策を練る事が必要だ。