審査請求人の夫名義の預金口座から請求人名義の証券口座等に入金された金員について、相続税法第9条「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当するとして原処分庁が行った贈与税の決定処分等に対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案で審判所は、同法の規定は適用されないと判断した。令和3年7月12日裁決。
原処分庁は、請求人名義の証券口座について、〇請求人自身の判断で取引を行っていた 〇投資信託の分配金が請求人名義の普通預金口座に入金されていた 〇分配金等を請求人の所得として確定申告していたことから、上記の規定に該当する旨主張する。
しかしながら審判所は、〇請求人は、入金の前後を通じて夫の財産を主体的に管理しており、その財産が請求人に帰属していたとは認められず、請求人が取引を行っていた事実をもって利益を受けたとは言えない 〇分配金を請求人が私的に費消した事実は認められず、管理・運用の範疇を超えるものとはいえない 〇確定申告は、銀行員の教示に従い深く考えずに行ったとの請求人の主張は不自然とまではいえない。上記を考慮すれば、同法の規定する「利益を受けた場合」が意味するところの、贈与と同様の経済的利益の移転があったものと認めることはできない―とした。
■参考:国税不服審判所|請求人の夫名義の預金口座から請求人名義の証券口座に金員が入金されたことは、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当しないとした事例|
https://www.kfs.go.jp/service/MP/04/1101000000.html#a124