交通事故によって傷害を受けた上告人が、加害車両の運転者である被上告人に対し民法709条または自動車損害賠償保障法3条に基づき損害賠償を求める事案に関連、
上告人の夫との間で人身傷害条項のある普通保険約款が適用される自動車保険契約を締結していた保険会社が、事故によって生じた上告人の損害について自賠責保険から自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払いとして金員を受領していることから、上告人の被上告人に対する損害賠償請求権の額から同金員に相当する額を全額控除することができるか否かが争われている事件で
最高裁第一小法廷は、できるとした原審の判断を否認、人身傷害保険について保険会社が被害者に対して自賠責保険分を含めて一括払いすることを合意した場合において、保険会社が自賠責保険から支払いを受けた損害賠償額相当額を被害者の損害賠償請求権の額から控除することはできないと真逆の判断をし、原判決を変更した。
最高裁は上告人と保険会社が締結した保険契約と約款について多面的かつ詳細に考察。「上告人の被上告人に対する損害賠償請求権の額から、保険会社が本件支払金の支払いにより保険代位することができる範囲を超えて本件自賠金に相当する額を控除することはできない」と結論づけた。
■参考:最高裁判所|保険会社が自賠責保険から支払を受けた損害賠償額相当額を被害者の損害賠償請求権の額から控除することができないとされた事例(令和4年3月24日・第一小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91048