いつの時代も国民の労働意欲が経済面の国力を左右する。具体的には、創業意欲の高低によって、将来の経済環境が決まる。
近年は、公的機関等によって創業支援や後継者育成支援が実施されてきた。しかし、日本の開業率・廃業率は国際的に見ると相当低水準にある。一体、何が根本的原因なのか。人々は幸福を求めて働く。一般に、一定の金銭の獲得を目指して職に就く(就職する、後を継ぐ、創業する等)。最初は自分の生活が成立てば満足するが、やがてより大きな富や幸福を求めるようになる。ここからが分岐点で、自分ひとりの幸福だけを求める人もいれば、自分の幸福を他人に分かち与えるような生き方をする人もいる。
さて、経済環境を高める上で重要な事は、幸福の種を植える事ではなかろうか。文豪幸田露伴は、『努力論』の中で「植福」を唱える(岩波文庫参照)。林檎の樹を例に「新に林檎の種子を播きてこれを成木せしめんとするのも植福である。同じ苗木を植付けて成木せしめんとするのも植福である。また悪木に良樹の穂を接ぎて美果を実らしめんとするのも植福である」と言う。
商売で言えば、創業や事業承継等を盛んにする事が「植福」である。国が将来の経済環境を増強出来るか否かは、これまで以上に創業意欲を喚起する事に掛かっている。