病気療養中の人に対してよく言われることであるが、病気は快方に向かっている時が一番用心を要する。例えば、酒を飲みすぎて体を壊した人が禁酒によって快方に向かっている時、「そろそろ大丈夫。少しくらい良いだろう」と油断すると、大変危ない。
商売も同様で、今度のコロナ禍のように突発的な原因によって需要が低迷し経営難に陥ったような場合である。経営者は必死になって、売上回復策、経費節減策、資金調達策等を探り、一定の改善効果の兆しが見えて来た時が最も用心を要する。各種公的支援等(助成金や低利融資)を受けて、「これで何とか乗り切れる。最悪の財務整理や廃業は必要なかろう」という時だ。
X社(社長が所有する西洋料理店2店経営)のA社長は、令和2年5月に1店を閉じた。同時に資金確保の必要性から閉店した店舗と土地の売却を覚悟した。ところが、夏から秋にかけてコロナ禍がやや落ち着いた為、店舗の売却活動は見送った。しかし、11月頃から再びコロナ禍の悪化により、資金繰りが非常に厳しくなり、今、A社長は店舗の売却先を一生懸命探している。
長い道のりは、遠い先に灯りを確認しつつ希望を持って進むことが必要だ。しかし、遠い先に灯を見つけた時でも、これで一安心と力を抜かず用心して進む事が必要だ。