「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」というが、子供の教育に限らず、対象が成人であっても世話の焼きすぎは弊害が起こるものである。しかも、世話を受けた人から敬遠されたり恨まれたりする事も多々あるものだ。
X店(従業員50人)のA氏は、美大を出て10年目の老舗和菓子店4代目後継者である。父親である現社長の下で和菓子作りを修業してきたが、親子間だけでなく、他の従業員との意思疎通が苦手で、技能や営業活動等が期待通りには上達しなかった。社長はA氏の教育として、自ら菓子作りや接客・営業等を指導してきた。
そんな折、筆者はA氏に関する悩みを社長から相談された。ここ数年の実情は(1)定番商品の作り方、取引先の実態を手取り足取り教えてきた(2)主要取引先や社長の人的つながりを紹介して、定期的な交際を強く薦めてきた(3)将来を考え、取引先や銀行等と一緒に行うゴルフと視察等はいつも社長に同行させた。筆者の回答としては、社長も気づいていると感じたので、「世話をやき過ぎる」と指摘した。
今後はA氏の美的感覚を活かした商品作りを促したり、余暇の使い方を本人の意思に任せたりする事を薦めた。相談の結果、地元商店街や業界団体の役員等をして、人の世話をする側に立たせる事にした。