各地で事業承継に関するセミナーや相談会が盛んである。しかし、一般知識(予備知識)としては有効であるが、自社の具体策を考え始めると、一般論だけでは解決出来ない課題が次々に出てくる事が多い。
中小企業の親族による事業承継を考えると、例えば次のような検討課題がよくある。(1)経営者の息子や娘等が承継者としている場合、年齢・承継意欲・基礎能力・健康等が適当か(2)経営者に大きな借金がある場合、承継者は負の資産も引き継ぐ覚悟があるか(3)株が承継者の兄弟や叔父叔母等に分散している場合、将来の経営権に不安がないか(4)承継者の姉夫婦や叔父・叔母等が社員(役員として重要な地位にいる)で存在する場合、リーダーシップは大丈夫か。
以上は事例のごく一部である。筆者が経験した指導事例であるが、90歳の社長が引退し、長男の副社長(63歳)ではなく孫(副社長の長男)の常務(40歳)が承継者になった。副社長以外の兄弟にも株の移動がしてあったので心配した。相談の結果、副社長の兄弟の株は、承継者に売却する事で合意した。今後、親族による事業承継は、子が少ない事、長子相続が減っている事、職業選択の自由が進んでいる事等によって、事業承継に占める割合が大きく減少していくであろう。