生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患している幼年の被害者の治療を両親から依頼された被告人が、
インスリンを投与しなければ死亡する現実的な危険性があることを認識しながら、自身を信頼して指示に従っている母親に対し、医学的根拠もないのに、インスリンは毒であり、指導に従わなければ助からないなどとして、投与しないよう執ようかつ強度の働きかけを行い、父親に対しても、母親を介してインスリンの不投与を指示し、両親をしてインスリンの投与をさせず、その結果、被害者が死亡するに至った事件で
最高裁第二小法廷は「被告人は未必的な殺意をもって母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ、被告人には殺人罪が成立する。以上と同旨の第1審判決を是認した原判断は正当である」とし、
刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書、刑法21条により裁判官全員一致の意見で上告を棄却、当審における未決勾留日数中740日を本刑に算入した。最高裁は弁護人の上告趣意について、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらないと否認した。
■参考:最高裁判所|生命維持のためにインスリンの投与が必要な被害者の治療を投与をさせず,被害者が死亡した場合について,母親を道具として利用する等共謀した殺人罪が成
立するとされた事例(令和2年8月24日・第二小法廷・棄却)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89649