ご存知のように,「邯鄲〈かんたん〉の夢」とは、人の浮き沈みは定まりないものだという譬えである(盧生〈ろせい〉という書生が旅先で昼寝をしているうちに、夢の中で富貴を極める一生を送ったが、夢から覚めると元の書生に過ぎなかったという話。一炊の夢等とも言う)。
今度の新型コロナ感染症に関連して、上記と似たような思いを持った事業者が大勢いるのではなかろうか。年初までは平穏無事かつ順調に事業を営んでいたが、世界的なコロナ問題発生によって多くの事業が大きく沈んでしまったのである。実情はテレビ・新聞他で報道されているだけでなく、皆様ご自身がその影響を実感されているでしょう。今度のような日本中・世界中の混乱は、世界大戦・地球規模の災害等以外では考えられない現象である。
筆者は経営指導という仕事柄、平穏な日常では実感出来ない事業者の本質(経営理念)を見たような気がする。例えばX社(レストラン経営)のA社長は、自宅を担保に入れて全従業員の人件費・経費を全額立て替えた。役員報酬も全額返上した。Y社(居酒屋チェーン)のB社長は、全パートの出社を停止し(雇い止め)、全店舗を閉店した。今後の資金が用意出来ず、店舗再開が難しい。誰もB氏を非難出来ない。当人が一番苦しい選択をしたからである。