人間は胴体や手足等のバランスをとりながら歩いたり、荷物を運んだりしている。
他人との交際や日常の思考等のバランスも同様で、正義感や忠義心が強過ぎて人間関係に躓く事もあれば、きまりや技法等を疎かにして組織から疎外される事もある。
X 社( 工業用薬品の製造業、社員5 0 人)は、昭和2 0 年代に東京の町工場で修業を積んだ現社長A 氏の祖父が創業した会社である。A 氏は承継の直前まで、大手メーカーに勤務していた。A 氏が父親から事業を継いだ時は、労働環境や取引慣行等が古い体質で、上からの号令がなければ社員が動かないような会社だった。A 氏は承継後直ちに企業改革に着手して、社員からの提案・意見を重視し、貢献度に応じた処遇を実行した。当初は、やる気のある後継者と言われた。しかし、気付くとA 社長のみがひとり前進して、古参の役員や管理者は立ち止っているように見えた。「社長の考え方は、我々に理解出来ない」と言う。
A 氏は、1 、2 年X 社の現況をじっくり把握する事が大事であった。対策はその後である。また、長年続いた労働環境や社員の特性等を理解して、A 氏の経営ビジョンや戦略を啓蒙する努力が必要であった。これらがバランスすれば、経営者と管理者を含む社員との足並みが揃うであろう。