Weeklyコラム 店舗作りの遊び心

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居酒屋チェーンX(5店経営)の店主A氏は、若い時から20年間同業種の居酒屋に勤め、その後張り切って独立開業した。

仕事の習慣になっていた店内の整理整頓を心掛け、清掃・営業時間厳守・食材管理・労務管理等競争店よりも徹底していた。店内には置物や掲示物等をほとんど置かず、他店との差別化を図ろうとしていた。ところが、開店当初から入店客数が少なく、滞留時間が短い為か平均客単価も低かった。A氏は自己の努力が報われない事を非常に悩み、専門家の助言を求めたが良い改善策は中々得られなかった(必死に取組んでいるが、何かが足りないはずだ)。

その改善策のきっかけは、仲間と行ったキャンプだった。夕食後、皆で澄み切った夜空に浮かんだ満月を眺めていた時だった。仲間の一人が、「きれいな月だけれど、欲を言えば雲間に見えかくれする月であればもっと良いねえ」とフトつぶやいたのである。この言葉から、A氏はあるヒントを掴んだ。自店に足りなかったものは、月を眺める時の雲間(遊び心というゆとり)である、と。A氏は直ちに店舗内外のデザインを変更したり、置物・掲示物・メニュー名称・店員の制服等の訴求物を工夫したりした。結果、店舗空間にやすらぎが生まれ、お客の滞留時間が長くなり、来店者も増加した。