上告人が同人の被上告人に対する貸金返還請求権をAから譲り受けたとして被上告人に対し貸金・遅延損害金の支払いを求めるなどしている上告審で、
最高裁第二小法廷は、前訴で貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被上告人が、契約の成立を否認することは信義則に反するとの上告人の主張を採用しなかった原審の判断には違法があるとして、原判決中、金員支払い請求に関する部分を破棄、本件を東京高裁に差し戻した。Aは被上告人から建物を購入したとして明け渡し請求をしたところ、前訴1はこれを棄却。これを受けて上告人は、Aが被上告人と建物につき譲渡担保設定予約をし、予約完結権を行使した上、譲渡担保権を実行して建物を上告人に売却したから上告人が所有者だと主張。被上告人は、Aと締結したのは金銭消費貸借契約だと主張しつつ譲渡担保設定予約の成立を否認。前訴2は上告人の建物明け渡し請求を棄却した。
最高裁は、原審は事案に係る諸事情を十分考慮せず、被上告人が各前訴では自らAの面前で金銭消費貸借契約書に署名押印したことや金員を返す予定である旨主張していたなどとする上告人の主張についても審理判断せず、被上告人の否認は信義則に反するとの主張を採用しなかったとした。
■参考:最高裁判所|貸金に係る消費貸借契約の成立に関する原審の判断に違法があるとされた事例(令和元年7月5日・第二小法廷・結果/その他)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88774