上告人(各種印刷物の紙加工品製造会社)が被上告人(日用品雑貨輸出入・販売会社)に対し、売買契約に基づき代金2,813万円余と遅延損害金の支払い等を求める本訴に対し、
被上告人が、上告人による債権仮差し押さえ命令申し立てが被上告人に対する不法行為に当たり、これによる損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなど、本訴請求を争っている事案で最高裁第一小法廷は、原判決のうち、代金の一部と一部代金の遅延損害金請求を棄却した部分を破棄、同部分につき大阪高裁に差し戻した。仮差し押さえ申し立てが、当初から保全の必要性が存在せず違法、不法行為に当たるとの判断では原審も最高裁も一致するが、違法な申し立てと、債務者がその後に債務者と第三債務者の間で新たな取引が行われなかったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係があるかどうかで判断が分かれた。
原審は「ある」とし、売買代金債権の一部消滅を認容。これに対し最高裁は、第三債務者において申し立てにより被上告人の信用がある程度毀損されたとしても、そのことをもって逸失利益の損害が生じたと断ずることはできないとし、申し立てと逸失利益の損害との間に相当因果関係があるとはいえないとした。
■参考:最高裁判所|売買代金請求本訴,損害賠償請求反訴事件(平成31年3月7日・最高裁判所第一小法廷・破棄差戻)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88472