上告人が被上告人に対し、相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして、被上告人が遺産分割調停で取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持ち分移転登記手続き等を求める事案で最高裁第二小法廷は原判決を破棄、東京高裁に差し戻した。
譲渡が、亡父の相続においてその価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)に当たるか否かが争われている。原審は▽遺産分割が確定すれば、譲り受け人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになり、贈与があったと観念できない▽譲渡に係る相続分に経済的利益があるか否かは当該相続分の積極・消極財産の価額等を考慮して算定しなければ判明しない―から贈与に当たらないとして請求を棄却。
最高裁は、共同相続人間の無償による相続分の譲渡は、積極・消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡をした者の相続において903条1項の「贈与」に当たると判断。相続分の譲渡は譲り受け人に対し経済的利益を合意により移転するものといえ、遺産の分割が相続開始の時に遡って効力を生ずる(909条本文)という文言はそのように解する妨げとならないと説示した。
■参考:最高裁判所|遺留分減殺請求事件・平成30年10月19日・第二小法廷・破棄差戻|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060