ここで介護サービスとは、病気の看護も含めて考える。俳人正岡子規の『病牀六尺』(岩波文庫)に、こんな文がある。「病気の介抱に精神的と形式的との二様がある。精神的の介抱といふのは看護人が同情を以て病人を介抱する事である。形式的の介抱といふのは病人をうまく取扱ふ事で、例えば薬を飲ませるとか、繃帯を取替るとか、背をさするとか、・(中略)・この二様の介抱の仕方が同時に得られるならば言分はないが、もしいづれか一つを択ぶといふ事ならばむしろ精神的同情のある方を必要とする」。
マスコミ等の報道によると、2025年までに団塊世代の全員が後期高齢者(75歳以上)となり、介護を必要とする人が今と比べ急増するという。施設と介護要員が不足する事が心配され、国や自治体の大問題になっている。日本人は予想出来る課題は必死にやり遂げるので、恐らく必要な施設や介護要員を確保するであろう。
しかし、問題は精神的な介護である。精神的介護は、たとえ家族が携っても難しい部分が多く、介護者には心を癒す精神医学・対話技法・人生哲学・宗教・音楽等を始め、人間性に富んだ高度な教養が必要であろう。将来は、従来の介護方法と違う精神的な介護を重視するサービスが、新しいビジネスとして登場するかもしれない。