原処分庁が滞納法人の滞納国税を徴収するために、同社が運営していた教室に設置されていた動産を差し押さえた。審査請求人が、これらの動産は差し押さえ時点では請求人の所有であり、滞納法人に帰属する財産ではないので、差し押さえは違法、無効だとして全部の取り消しを求めた。国税不服審判所は、第三者対抗要件である引き渡しについては占有改定により完了していたと認定、差し押さえを取り消した。29年10月18日付の裁決。
原処分庁は、請求人と滞納法人の間で締結された合意書には建物の占有移転に係る記載はあるが、建物内にあった動産の占有移転に係る記載はないなどとして、請求人は動産の引き渡しを受けていない旨主張。
審判所は、請求人と滞納法人は関係者への影響を最小限にすべく、事業の承継に必要な建物と動産を滞納法人から滞りなく請求人に承継させることを企図していたことからすると、合意書に明示的に記載されていなくとも、建物の占有の移転だけでなく、建物内に存する動産の占有の移転にも合意するとともに、動産が現実に引き渡されるまでは動産を請求人のために占有することに合意したと解すべきであり、請求人は差し押さえの前に、占有改定により動産の引き渡しを受けていたといえるとした。
■参考:国税不服審判所|原処分庁による動産の差押処分時点の第三者対抗要件を巡り差押え取り消し事例(平成29年10月18日裁決)|
http://www.kfs.go.jp/service/MP/11/0401030300.html#a109