日本法人の香港子会社が中国企業に対して原材料等を無償支給して加工を委託する、いわゆる「来料加工取引」をめぐる事案で、国税不服審判所がタックスヘイブン(TH)対策税制に係る課税処分を取り消す裁決を行ったことがわかった。
審判所が納税者側の主張を認めたのは初めてとみられる。同事案は、プラスチック精密成形製品等の製造・販売を手がける日本法人Xが申告した法人税をめぐるもの。Xは香港に子会社Yを所有。Yは中国企業サイドとの間で、中国の工場(来料工場)でプラスチック製品の来料加工業務を行う契約を締結。Yが必要な設備・原材料等を無償提供して製品を組み立て加工させ、その全量を引き取る。Yは製品の主な原材料を来料工場と同一建物内にあるYの中国子会社Zから購入するが、Yに輸出され再輸入されることはなく、Zの工場から来料工場に直接納入される。Zの総経理は来料工場の工場長を兼務。
Xは、Yの主たる事業は「卸売業」であり、TH税制の適用除外要件を満たすとして申告したところ、原処分庁は主たる事業は「製造業」であり、要件を満たさないとして更正処分等を行い争いとなった。来料加工取引について「製造業」なのか「卸売業」なのかが争点となり、これまでの裁判や裁決では「製造業」と判断されてきた。