多くの企業では、規定の年齢で一旦定年を迎え、その後有期雇用契約にて再雇用という制度を採用している。その際に、従来の雇用条件から待遇面の引下げが行われる。給与や各種手当、賞与などの削減もしくは支給停止が行われる。
しかし、労働契約法第20条では有期雇用と無期雇用の労働条件の相違は不合理なものではあってはならないと規定されており、定年後の再雇用にあたっての労働条件の引き下げについては、労使間に争いの余地があるのも事実だ。先日の最高裁の判決では、定年後の再雇用者と正社員との賃金格差について2割程度の減額は容認されるとした高裁判決を支持した一方、精勤手当については格差を容認せず、支給するよう命じている。
今回の判決を受け、多くの企業で改めて検討すべきなのは各種手当についてはそれぞれの手当ごとに支給の趣旨に鑑み、支給すべきかどうかという点と、基本給などの賃金を引き下げる場合、どこまで削減するかだろう。あまりに大幅な減額を行った場合、訴訟となる可能性もある。現状の自社の再雇用の条件について再確認する必要があるだろう。なお、別の裁判では、定年後の再雇用にあたって75%賃金カットの提示について、高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとされている。