従来、日本と中華人民共和国(中国)からそれぞれ相手国に派遣される企業の駐在員等については、両国における年金制度に加入しなければならないという、いわゆる二重加入問題が生じていた。これまで日本人が日本企業から中国の企業に派遣された場合などでは、日本の年金制度と中国の年金制度の両方に加入する必要があった。
先日、日本と中国との間でこの問題を解消する日中社会保障協定に署名が行われた。今後、国会の承認を得る必要はあるが、この協定が発効すれば派遣期間が5年以内の一時派遣被用者は原則として、派遣元国の年金制度のみに加入すればよいことになるため、企業及び駐在員等の負担が軽減されるようになる。また、両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低限必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようになるため、従来のような掛け捨ても避けられるようになる。
この問題は各国との間で常に起こり得る問題だが、すでにドイツ、イギリス、韓国、アメリカなど20ヶ国と同様の協定が締結されており、スウェーデン、トルコ、フィンランドとも交渉中、オーストリアとは予備協議が開始されている。