全国で商店や会社が次々に廃業している。お客の重要性は、経営形態や規模、固定客の割合、知識技術の独自性等によって多種多様であるが、その財産価値も大きく違う。
例えば、食品卸業の場合である。一般に、特定の飲食店・ホテル・給食会社・病院等に日々定期的に食品を販売・配送している。新規顧客開拓にも力を注いでいるが、毎月の販売先・売上高・決済条件等は大抵一定である。お客の金銭価値は決算書には書いてないが、会社によってはお客が最大の財産である可能性がある。現預金や土地・建物等をほとんど持たず、毎年損失を計上していても、有償でお客が営業譲渡されることは珍しくない。知識技術等と同様に、単純に放棄してしまうことは大変惜しい事だ。更に、こんな相談を経験したことがある。
X社(工業用薬品卸業、社員20人)の業績は良好であったが、後継者不在によって廃業を検討していた。営業譲渡の話が持ち込まれ、社員の継続雇用が検討された際に注目された事は、社員の人脈や新規開拓等のノウハウであった。X社の期待以上の営業権評価となった。
固定客中心の営業か否か、特殊な知識技術の有無に関係無く、お客の財産価値を充分に認識しておくことだ。経営中は当然、廃業後も経営者や社員の運命を左右する。