人は、初めて見る物や聞く物に新鮮な感動をするものである。逆に、日々見ている物には興味や関心を持たなくなるものだ。
レストランチェーンを経営するA氏から聞いた話である。各店を定期的に巡る負担は大変ですねと聞いたところ、「店舗管理は担当者任せで、経営者は頻繁に行く必要が無い。見慣れた自店に行っても革新的アイデアを生み出す力にならない」と言う。
A社長の話を聞いた時に思い出したのは、梅棹忠夫著『福山誠之館』にあった一文である。「なんにもしらないことはよいことだ。自分の足であるき、自分の目でみて、その経験から、自由にかんがえを発展させることができるからだ。知識は、あるきながらえられる。あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながらあるく。これは、いちばんよい勉強方法だと、わたしはかんがえている。(原文のまま)」(『日本探検』所収、講談社学術文庫)
筆者が街づくりのヒントや新店舗の立地探し等をする場合、アイデアを生み出す力は、初めて訪れる街や店舗等であることが多い。事前に知識を準備しておくと、感動が少なかったり、予想外の見聞に出会うことが無かったりする。予め用意した知識に縛られず、自由な気持ちでヒントを探す事がアイデアを生み出す力になる。