角化症治療薬の有効成分であるマキサカルシトールを含む化合物の製造方法で特許を取得した発明者と、その幾何異性体から製造した類似品を輸入・販売する業者らの間で争われていた特許権侵害行為差し止め請求事件で最高裁第二小法廷は、原審に続き、特許権侵害に当たらないと主張する輸入・販売業者側の上告を棄却した。
出願人は特許出願時に特許請求の範囲に幾何異性体のものを記載していなかった。最高裁は平成10年、同様の事件で特段の事情が存在するとして特許権侵害を認めない判決を出した。輸入・販売業者側はこの判例を基に特段の事情が存在する旨主張。無記載がこれに該当するか否かが争点。
最高裁は▽出願人が特許出願時に容易に想到することができた他人の製品等に係る構成を、特許請求の範囲に記載しなかっただけでは、特段の事情が存するとはいえない▽出願人が特許出願時にそのような構成を特許請求の範囲に記載せず、他人の製品等が特許請求の範囲から意識的に除外された時などは特段の事情が存するといえる―とし、当該事件の場合、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて記載しなかった旨を表示したという事情があるとはいえず、原審の判断を是認した。
■参考:最高裁判所|特許権侵害行為差止請求事件・平成29年3月24日(第二小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86634