厚生労働省では、平成20年12月2日以降、下請事業者の経営の安定・健全性を確保し、労働者の労働条件の確保・改善にもつなげるため、親事業者による違法行為については、公正取引委員会・経済産業省への通報制度等を実施している。
平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、「長時間労働の背景として、親事業者の下請代金法・独占禁止法違反が疑われる場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を構築し、下請などの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築する」と明記されている。これを受けて厚労省では、労働基準監督機関において、事業場に対する監督指導を実施した結果、労働基準関係法令違反が認められ、その違反の背景に親事業者による「下請たたき」が存在しているおそれのある事案を把握した場合、公正取引委員会又は経済産業省にそのような事案を通報することになった。
下請け企業における労働法令違反をきっかけに発注側が立入検査を受ける可能性が高まったわけだが、これはあくまでも下請事業者等が通報を希望した場合に限ってのこととなる。いずれにせよ、安易な下請たたきが思わぬ形で返ってくることもあるため注意が必要だろう。