西村あさひ法律事務所パートナー弁護士の太田洋氏は、先に確定した組織再編をめぐる税務訴訟であるIBM事件とヤフー・IDCF事件の判決が実務に甚大な影響を与える可能性は低いとの見方を示した。
ヤフー事件は、組織再編税制の行為計算否認規定(法人税法132条の2)の適用をめぐって争われた。同適用に係る最高裁の判断が初めて示され、国側に軍配が上がった。太田氏は132条の2について、「やりすぎと認定されると否認される」が、しっかりとした事業目的があり、それほど異常・不自然なものでなければ、否認されないとの考えを示唆した。
一方、IBM事件は、同族会社の行為計算否認規定(同法132条の1)の適用をめぐって争われ、高裁段階で確定した。132条の1に関しては、独立当事者間取引からの乖離があれば、経済合理性がないので同規定が適用できるという解釈が独り歩きしていたかもしれないが、ヤフー事件の最高裁判決と合わせて読めば、現在のところ、最高裁はクリアな判断基準を示していないといえ、高裁判決が独り歩きをすることはなく、実務にもそれほど大きな混乱は起きないとの見方を明らかにした。太田氏は組織再編をめぐる税務に詳しいことで知られる。(9日付「税のしるべ」掲載)