A信用組合の職員だった上告人らが、同組合と被上告人(16年2月に変更される前の名称はB信用組合)の合併により上告人らに係る労働契約上の地位を承継した被上告人に対し退職金の支払いを求める事案で 最高裁第二小法廷は、上告人らの請求を棄却した原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。上告人らの主張する退職金額は、A信組の合併当時の職員退職給与規程における退職金の支給基準に基づくもの。
これに対し被上告人は、 上告人らに係る退職金の支給基準については、個別の合意または労働協約の締結により合併に伴い定められた退職給与規程における退職金の支給基準に変更されたなどと主張。同基準が適用されると、退職金が0円となる上告人も生じる。
原審は、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対し労働者の同意があるとして、合意による基準変更の効力が生じているとした。
最高裁は、合併により消滅する信組の職員が合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合でも、それが労働者の自由な意思に基づいてなされたとの合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべきであり、原審の判断には違法があるとした。
■参考:最高裁判所:|退職金請求事件(平成28年2月19日:最高裁判所第二小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85681