従業員による横領事件が多発している。「横領」をキーワードにニュース検索をすれば一目瞭然だ。その額も数10万円のものから1億円を超えるものまで多種多様となっている。
企業としては、そのような横領の事実が発覚した場合、損害金の弁済はもとより、従業員を懲戒解雇するケースがほとんどだろう。しかし、たとえどれほど悪質な理由で懲戒解雇するにしても、解雇予告手当の支払いは義務となる。その支払いを免れたいのであれば、労働基準監督署に解雇予告除外認定の申請を行うことになるが、想像以上にハードルが高いので注意が必要だ。
まず、監督署としては当然に就業規則や36協定の締結・届出等、法定要件を企業側が満たしているかどうかを確認する。また、雇用契約にあたっての契約書の有無やその記載内容についてもチェックされる。さらに割増賃金の支払状況についても確認される。つまり、企業側が完全に労働法が求める要件を満たしていない場合は、この解雇予告除外認定申請自体が、自らの不備を監督署に明示することになるわけだ。
そのことがそのまま解雇予告除外認定の受理不受理に繋がるわけではないが、それでも企業側の不備を監督署に自ら申告する側面があることを十分認識すべきだろう。