Weeklyコラム 小さな危機の役割

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経営者は、特別な問題が発生しなくても常時心配している人もいれば、自社に何か問題があっても怠けて積極的な対処をしない人もいる。問題は後者で、例えば大地震を契機にBCP計画(事業継続計画;大災害等の時でも、経営が継続又は短期で回復出来る対応策)のような対策を提案しても、大抵は受容しない。

このような経営者が本当に切羽詰まると、大変深刻な状況と為る。大きな危機を乗り越えられる経営者は、日頃から小さな危機を迅速に解決することで、その手法や社内体制を確保している。しかし、小さな危機の役割を認識しない経営者は、放置していても重大な障害にならず解消してしまう場合がある為か、危機を乗り越える手法や人材を獲得しない。

整体法で有名な野口晴哉の著書『風邪の効用』(ちくま文庫)に、「それで私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと考えている。ただ風邪を完全に経過しないで治してしまうことばかり考えるから、ふだんの体の弱い処をそのまま残して、また風邪を引く」とある。

経営の「小さな危機」を風邪に譬えれば、小さな危機はむしろ経営体質改善の好機で、解消さえすれば終了と考えず、将来起こるかもしれない大きな危機を乗り越える役割があると考えたいものである。