トランプ減税の行方は如何に グローバル経済への影響注視

財務省は、所内講演会でのトランプ政権に課せられる経済的諸課題と経済政策の現状の資料をHP上に掲載した。以下そのポイントを見てみる。トランプ氏が掲げる「トランプ減税2.0」は、2017年の減税の恒久化や所得税非課税枠の拡大、法人税率の一層の引下げを含み、最大16兆ドル規模の財政負担が想定されている。その財源として注目されるのが関税であり、対中・対同盟国への追加関税によって今後10年で最大2兆ドルの歳入確保を見込む。減税による景気刺激効果が期待されるが、関税によるコスト増が企業や消費者に転嫁され、インフレと景気下押しを招く懸念も強い。特に関税は逆進的であり、低所得層ほど負担が重くなる構造を持つ。また、関税収入に財政を依存する構造は不安定で、持続性に乏しい。こうした政策の狙いは単なる財源確保にとどまらず、米国製造業保護や対中圧力、供給網の再構築など地政学的・通商戦略的意図を含んでいる。日本では対米輸出品の関税強化やサプライチェーン見直しの圧力が高まる。減税は企業の米国回帰を促す内製化政策として機能し、減税と関税の組合せは短期的景気刺激にはなるが、インフレ加速と貿易摩擦のリスクを内包し、米国のみならず日本を含むグローバル経済への影響も注視すべきであろう。

■参考:財務省|トランプ政権に課せられる経済的諸課題と経済政策の現状|

https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2025/lm20250529.pdf