Weeklyコラム 酒掃・応対・進退

LINEで送る
[`yahoo` not found]

「酒掃(さいそう)応対進退」という言葉は、『論語』の中に見られる(巻第十 子張第十九、金谷治訳注・岩波文庫参照)。大体、酒掃とは掃除、応対とは挨拶、進退とは立ち居振る舞いで、これらも人間修養の一環として後回しにすべき事柄ではないと言う。

近年、販売業やサービス業において「おもてなし」という用語がよく使われるが、その本質を理解している人が少ないように思う。「持て成し」とは、元来は待遇やご馳走を意味するが、最近使われているおもてなしとは、快い接客サービスや楽しい空間づくりの演出等を提供することである。具体的に言えば、店舗内外(旅館ホテルであればロビーや客室等)の清掃、接客の挨拶、出迎え・見送り、身なり、姿勢や表情等がお客にとって快適かつ楽しいことである。

昔、武家等では重要なお客を迎える時、門前や玄関の清掃を徹底したそうである。大名や旗本は、婚儀の際に門の建替えや新築までしたと言う(江戸幕府十一代将軍徳川家斉の姫様が加賀藩に嫁ぐ時に建てた現在の東大赤門は有名)。

ホテルや飲食店が旨い料理を出したり丁寧な接客態度で持て成したりすることは大切である。しかし、まずは清掃・挨拶・姿勢・親切な動作・身なり等の形(外見)を整えることが、おもてなしの第一歩となる。