遺留分訴訟における和解 価額弁償金と断定できず

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請求人は被相続人の相続人であり、被相続人の死亡後に、他の相続人らに対し遺留分侵害額請求訴訟を提起した。訴訟の過程で和解が成立し、請求人は一定額の解決金を受領した。これに対し請求人は、当該金銭は価額弁償金であるから、相続税法第35条第3項第1号の更正の特則対象となり、課税価格に算入すべき金額は財産を取得した他の相続人に帰属すべきと主張。

国税不服審判所は、請求人が受領した解決金について、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金と断定するには足りないと判断。和解はあくまで相互の権利関係についての包括的な解決を目的としており、請求人の遺留分侵害額請求を全面的に認容したものではなかった。また、解決金の金額やその
支払方法、和解条項の文言などからしても、当該金銭が直ちに価額弁償金であるとはいえないとされた。単に請求の端緒が遺留分侵害額請求であることのみをもって、相続税法第35 条第3 項第1 号の適用が認められるわけではなく、本件においては、請求人の主張する更正の特則の適用は認められず、国税当局による更正処分は適法であると結論づけられた。遺留分に関する和解が行われた場合でも、その実質的内容を慎重に吟味しなければ相続税法上の取扱いを誤る可能性があることを示唆している。

■参考:国税不服審判所|請求人が訴訟上の和解に基づき受領した解決金は、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると断定することはできないため、更正の特則である相続税法第35条第3項第1号の要件は満たさないと判断した事例(平成28年6月相続開始に係る相続税の更正処分・全部取消し)(令和6年7月3日裁決)|

https://www.kfs.go.jp/service/MP/04/1002000000.html#y02