被告人は、2015年3月23日に長野県佐久市内の交差点で、自動車を運転中に15歳の被害者を轢き、その後すぐに車両を停止したが、救護措置を行わず、事故発生の日時や場所を警察に報告しなかった。
第1審では、被告人が衝突現場に戻ったが被害者を見つけられなかったため、飲酒運転の発覚を恐れてコンビニエンスストアに口臭防止用品を買いに行った行動が救護義務を遅延させたと判断し、懲役6月の刑を科した。控訴審(原判決)では、被告人が事故後すぐに自車を停止し被害者を捜索しており、その行動が救護義務の履行意思を示していると判断され、第1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。
最高裁は、被告人は、被害者に重篤な傷害を負わせた可能性の高い交通事故を起こしことを認識したにもかかわらず、負傷者の救護等のため必要な措置を臨機に講じなかったものといえ、道路交通法72条1項前段の義務違反と認められる。原判決の判断は法令の解釈適用を誤った違法があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、刑訴法411条1号により原判決を破棄。第1審判決の判断は、その結論において是認でき、被告人のその余の控訴趣意もいずれも理由がなく、被告人の控訴を棄却した。
■参考:最高裁判所|道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務に違反したとされた事例(令和7年2月7日・第二小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93774