映画会社である上告人が、被上告人の日本芸術文化振興会法等で定められた独法の理事長に対し、「宮本から君へ」と題する劇映画の制作活動につき、助成金の交付申請をし、交付内定を得た。その後、本件映画出演者の一人がコカイン使用のため逮捕され、有罪判決が確定した。理事長は上記事実関係により国の事業による助成金を交付することは公益性の観点から適当ではないとし、本件交付金を交付しない旨処分したため、上告人が本件取消しを求めた事案。
原審は、本件映画の中で重要な役割を演じ有罪判決も広く報道されたこと、重大な薬物犯罪であり、他の出演映画等の多くは代役による再撮影が行われている状況により、本件の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くとは言えないとし、本件処分を適法とした。
最高裁は、芸術的な観点から助成の対象とすることが相当といえる活動につき、公益が害される理由で交付の拒否が広く行われれば、表現行為の内容が委縮される可能性があり、芸術家の自主性や創造性をも損なうもので、憲法21条1項の趣旨に照らしても看過し難いとし、国は薬物犯罪に寛容等といった誤ったメッセージと受け取られることも想定し難いとして、理事長の裁量権の範囲の逸脱・濫用したものとして違法とした。
■参考:最高裁判所|独法理事長がした、劇映画の製作活動に対する助成金を交付しない旨の決定が裁量権の範囲を逸脱濫用したものとして違法であるとされた事例(令和5年11月17日・第二小法)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92502