Weeklyコラム 順風の時、逆風の時

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物事は真剣な努力をしないで旨く行く時もあれば、一生懸命努力をしても報われない時もある。これを風に譬えて、順風の時と逆風の時は、どのような対応が良いか。

幸田露伴は『努力論』(岩波文庫)の中で、舟の場合を例にして、本来風に順風と逆風の定まりは無いとする。即ち、「同一の南風が北行する舟には福となり、南行する舟には福ならぬものとなるのである。順風を悦ぶ人の遇って居る風は、即ち逆風を悲む人の遇って居る風なのである。福ならずとせらるる風は即ち福なりとせらるる風なのである」と言う。

長年営んでいる家業の商品等が、世の需要に合わなくなる事がある。廃業者も多いが、逆風を変革のチャンスと捉えて、大きく成長する例もある。例えば、A氏は地方都市の駅前で中規模陶器店を営んできたが、来店客や売上が低迷してしまった。やむを得ず、長男がIT技能を活用して地域の陶芸家や彫刻家等を組織化して、その作品をネット通販するシステムを構築した。結果、店頭販売の数倍の売上規模となった。このように、逆風と思っても、進む方向や分野等を変えれば逆風が順風になる場合も多いのである。注意すべきは、順風の時に追い風と油断していると足下をすくわれ、舟で言えば沈没してしまうこともある。