C労働組合D支部執行委員である被告人A及びBは、株式会社E取締役のFに高圧的態度で、同社が日雇運転手であるD支部組合員のGを雇用している旨の就労証明書を同社に作成・交付させようと考え、共謀の上、平成29年11月27日E社の事務所において、Fが高血圧緊急症によって体調不良を呈した後もなお執ように求めた。
さらに、D支部執行委員であるHと共謀の上、同月29日より3日間に亘って事務所に押し掛け、Fに対し同書作成等を求めた上、同月2日以降、事務所周辺にD支部組合員をたむろさせ、4日AおよびHが事務所に押しかけ怒号し、気勢を示したが、Fが要求に応じず、目的を遂げられなかった。
第1審判決は、E社に就労証明書等を作成等すべき義務はないとし、また被告人両名の行動は脅迫に当たるとして強要未遂罪の共同正犯が成立するとした。原審は、第1審判決が強要未遂罪の解釈を誤り、事実誤認しそれらが判決に影響することは明らかとして、第1審を破棄し、AとHの脅迫罪の共同正犯とし、Bを無罪とした。
最高裁判所は、原判決は、第1審判決の事実認定が不合理であることを十分に示しておらず、刑訴法382条の解釈適用を誤ったものであり、よって原判決を破棄し、大阪高等裁判所に差し戻すとした。
■参考:最高裁判所|強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例(令和5年9月11日・第一小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92347