非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買い取り請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて買い取り価格を決定する場合に、当該会社の株式に市場性がないことを理由とする減価(非流動性ディスカウント)を行うことの可否が争われた抗告事件で最高裁判所第一小法廷は、非流動性ディスカウントを行うことはできないと判断、1審決定を取り消すとともに、原決定を破棄した。
その上で、抗告人が所有していた株式の買い取り価格を1株につき106円と認定。鑑定人に支払った鑑定料の配分割合なども指示した。
この事案は、吸収合併に反対して会社からの退出を選択した株主が、会社に対して持ち株を売却する際の買い取り価格の決定を申し立てたもの。原審は、株式の換価の困難性を考慮することが裁判所の合理的な裁量を超えるとはいえないとし、買い取り価格を1株につき80円とした。最高裁は、収益還元法によって算定された価格を、同評価手法に要素として含まれていない市場における取引価格との比較によりさらに減価をすることは相当でないと説示。当該会社の将来期待される純利益の現在価値の合計は鑑定人の示した金額であり、買い取り価格は抗告人の主張通りになるとし、抗告人側の逆転勝訴を言い渡した。
■参考:最高裁判所|株式買取価格決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85016