なりすまし詐欺の窃盗未遂 既遂危険性と実行着手あり

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被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員及び金融機関職員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、令和3年3月5日、氏名不詳者らが被害者方に電話をかけ、被害者(当時76歳)に対し、過払金を還付する金融機関口座のキャッシュカードが古く、使えないようにする必要があるので回収しに行く旨のうそを言い、すり替え用の偽のカードが入った封筒を携帯し、同人方付近路上まで赴いたが、被害者が相手を不審に思い電話を切るなどたため、その目的を遂げなかった事案。

第1審は、本件公訴の事実経過を前提としても窃盗の実行の着手はないので、被告人は無罪である旨主張した。第1審は、窃盗の実行の着手があったとは認められないとし、刑訴法336条により、被告人に対して無罪を言い渡した。

原判決は、本件は窃盗に密接した行為であり、行為の開始時点で既に窃盗の既遂に至る客観的な危険性があり、すり替え窃盗の実行の着手を十分認めることができるとし、第1審判決に事実誤認はないが、窃盗未遂罪の成立を否定した点において刑法43条本文の解釈適用を誤った違法があるとして、被告人を懲役3年、4年間執行猶予に処した。最高裁は、原審罪判決は刑訴法400条但し書に違反しないとし、上告を棄却した。

■参考:最高裁判所|被告事件が罪とならないときに当たるとして無罪とした第1審判決を法令適用の誤りを理由に破棄し犯罪事実を認定して自判をした原判決が刑訴法400条ただし書に違反しないとされた事例(令和5年6月20日・第一小法廷)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92157